宮部みゆきさんが「現代社会の罪と罰をがっつり描けるミステリーは警察小説だけじゃない。そう高らかに宣言する新鮮な快作だ。」と宣言する帯のコメントで買ってみました。
自衛隊を舞台にした新しいミステリー
なるほど著者 神家さんは元自衛隊勤務というだけでなく、祖父の代からの軍人一家なんですね。自衛隊員たちの心情とか学校の事、出身校別の意識の違いとか詳しく書かれています。
500ページを超える長編ですが、正直言って前半はどんな展開になるのかわからず、読み進めるのが少々苦痛でした。しかし半分を過ぎたあたりから事件が動き始め、登場人物たちが躍動し始め、一気に面白くなってきます。読むのに費やした日数は、前半に4日、後半は1日。この差は面白さが次第に加速していったから、と言ってもいいでしょう。
前半は我慢。しかし後半には一気呵成の楽しめる展開が待っています。主人公の成長ぶりにも応援したくなったな~。
ただ、陰謀の裏に某国の機関がいたという展開には少し興ざめでした。ちょっとありきたりすぎる謎解きではないでしょうか?それまでに、自衛隊内部と、自衛隊に深く関わる納入業者たちのうさん臭い関係がさりげなく描かれていただけに、最後はちょっと…。日本国内の登場人物だけで完結させるのは難しかったのでしょうか?
この作品の主人公も女性です。この事件をきっかけに成長していく女性自衛隊員。周囲の登場人物の方がキャラは立ちすぎるほど立ってますが、主人公、甲斐和美三等陸尉が成長していく様子には好感がもてました。そうそう、この作品は最初の登場でうけた印象(主人公の味方か敵かという単純なカテゴリー分けも含めて)が覆されることが多く、読者を油断させてくれません。その点においても、十分に楽しめさせてくれた一冊でした。
(女性自衛隊員ですが、「女刑事がかっこいい!」カテゴリーにいれてしまいました。続編を期待!)