壮絶なマル暴刑事の物語
帯に「日本推理小説作家協会賞受賞」とあったので、違う内容を想像して購入しました。期待は見事に裏切られましたが、期待以上の凄い世界に連れて行ってくれました。
読み始めて、これはミステリーじゃないと感じ、どちらかというと暴力団と暴力刑事のアウトローな世界を描いた物語だと思っていましたが、読み進むうちにこの世界にどんどん引き摺りこまれている自分がいました。プ~タロウも高倉健映画を観た後、肩をいからせて映画館から出てきた人々と同じ人種だったんですね。
とにかくアウトロー!舞台は広島!菅原文太さんの「仁義なき闘い」の世界が昭和末期まで続いていたのです。柚月さんはまだ50歳にならない女性作家、よくぞこの世界が書けたものだと思います。読んでる途中は女性作家であることをすっかり忘れていました。
憬れます!男と女と若者の不可侵な世界!
大上巡査部長はかっこいい! 男が惚れる男でしょう。 警察内部には彼を疎む輩も大勢いますが、そんなことはお構いなしに己の信念を貫き通す。警察のルールとしては間違っていても、自分の信念としては間違っていない行動を常にとり続けるのです。惚れました。
もう一人、「志乃」の晶子姐さんもかっこいい!彼女と大上の因縁もすごいものがあります。2人がお互いに信頼しあう拠り所となる出来事は作品の後半でやっと明らかになります。晶子姐さんのきっぷの良さ。女っぷりの良さ。それもこの作品を面白くしている大きな要因です。もしかしてこの物語の中で一番魅力的なのは「志乃」の晶子さんかもしれません。
そして、主人公の日岡くん。途中までは、大先輩に必死についていく新人警官にしか思えなかったのですが、あるところで、日岡くんの正体が暴かれ、そしてハラハラさせられ、最後には読者を気持ちよくさせてくれます。これが本作最大のどんでん返しでしょう。このどんでん返しでこの物語の全てに納得がいきます。(これを書いたらネタバレなので、こんな表現で許してつかあさい。笑)
と書いてくると、この作品は登場人物全員、悪役も含めて、キャラが立っています。キ魅力的なキャラが多い物語は絶対に面白い。
世界観はちょっと古いけど、気持ち良くアウトローの世界に浸りたい人にはおススメです。でも大上刑事は死んじゃったんですね。
最後に、作品のプロローグ部分は、作品のエピローグで再び登場してきます。エピローグを読んだ後、もう1回プロローグを読むことをおススメします。
普通のアウトローな話ではありません。仁義なき闘いを超えると言っても過言ではありません。思いがけず、おススメの一冊です。